おぐまうどん

「おぐまうどん」は、1978年の創業以来、地域に根ざした味を守り続けてきた。
創業者であり、現店主のお父様が「地元の人に毎日食べてもらえるようなうどんを作りたい」という想いで始めた店で、創業47年を迎える今も親子二代にわたってその味が受け継がれている。
最大の特徴は、国産小麦とお父様が愛用していた小麦を独自にブレンドした細麺、ラウス昆布と鰹節で仕上げた甘めの出汁に合わせている。喉ごしが良くつるりとしており、昔から通う常連客は「変わらない味がうれしい」「つるつるしていて食べやすい」と口をそろえる。
「当店は父の好みを大切にしています。時代が変わってもうどんは“優しい食べ物”であってほしい。食べる人に安心してもらえることが一番の喜びです。」店主の言葉からは、単なる味の継承ではなく、“想い”そのものを受け継ぐ姿勢が伝わってくる。
この変わらぬ味こそが、「おぐまうどん」の原点であり、地域に根づく理由でもある。

「うどんは毎日が勝負」と語る店主にとって、最も神経を使うのは毎朝の仕込みだ。生地は気温や湿度によって状態が変化するため、その日の天候に合わせて水分量を微調整する必要がある。長年の経験と手の感覚が頼りだ。
お父様の代から使い続けている製麺機で生地をのばし、店内で自家製麺を行う。全ての工程が手作業で時間も労力もかかるが、「これをやめたら、おぐまうどんじゃなくなる」と笑う。
朝の店内には、湯気と小麦の香ばしい匂いが広がる。その香りを胸いっぱいに吸い込みながら、一日の始まりを感じる瞬間が店主にとっては何よりの原動力だ。うどんづくりの合間には開店準備に余念がない。厨房では出汁の香りが立ち上り、窓際のテーブルを拭く音が響く。そうして迎える11時の開店とともに、いつもの常連たちが笑顔で暖簾をくぐってくる。
一見穏やかな日常の中に、47年間積み重ねてきた職人の時間が息づいている。

現在の一推しメニューは「しいたけキムチかしわうどん」である。
ピリ辛のしいたけキムチと甘く味の染み込んだかしわが絶妙に調和し、細麺と出汁に絡み合う人気の一杯だ。常連はもちろん、初めて訪れる人の心もつかみ、“食べるほどにまた恋しくなる味”として口コミでも評判を呼んでいる。
創業当時から通うお客様も多く、中には「子どもの頃に親と来て、今は自分の子どもを連れてくる」という三世代の常連もいる。また、かつて鳥栖に住んでいた人が、今は東京や仙台など遠方から「懐かしい味を食べに」と訪れることも珍しくない。「30年ぶりに来てくれた方が、“味が変わっていないね”って言ってくださって。本当に続けてきて良かったと思いました」と店主は語る。
営業時間は11時から16時までと短いが、店の外に設置された冷凍うどんの自動販売機が人気を集めている。仕事帰りや夕方に立ち寄る人も多く、完売する日もしばしばあるという。「お店の味を家庭でも味わってもらえるのがうれしい」と店主。忙しい現代でも、“おぐまの味”を気軽に楽しめる工夫が、多くのファンを喜ばせている。

「休んでもいいから、辞めないでね」そんな言葉をお客様からかけられるたびに、店主は「続けてきてよかった」と心から感じるという。「うどんを食べてホッとした」「元気が出た」その一言が、長い年月を支える力になってきた。店内は、昼時になると笑顔と湯気で満ちている。平日はサラリーマンや学生、休日は家族連れで賑わい、テーブルを囲む声が絶えない。湯気の向こうで聞こえる笑い声が、この店のもう一つの“味”だ。「鳥栖で生まれたこの味を、これからも守り続けたい。うどんを通して、少しでも“ホッとできる時間”を過ごしてもらえたら嬉しいです。」その穏やかな言葉には、地域の味を支え続ける誇りと、お客様へのあたたかいまなざしが宿っている。
47年という歳月を超えて、「おぐまうどん」は今日もお客様の心を満たしている。